社会保険新報 平成28年3月号

社会保険新報2016年3月号表紙

2016年3月号

千鳥ヶ淵
(千代田区)

【コラム東西南北】山陰を旅して

編集委員 松澤 巌

イラスト:東西南北

昨年の11月に妻と2人で山陰を旅した。私としては、大学時代の友人と旅して以来、28年ぶりであった。

羽田を10時過ぎの飛行機でたち、1時間20分ほどで出雲縁結び空港に到着した。到着後、ご当地の出雲そばを食してから、1日目の行動を起こした。

最初に訪れたのは、縁結びの地で有名な出雲大社である。大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)が築き上げた地上の国を天界の天照大御神(あまてらすおおみかみ)に譲る際、条件として求めたのが壮大な宮殿の建築で、それが出雲大社の起源といわれている。その後、大国主大神は幽事(かくりごと)(目に見えない世界)を司ったことから、縁結びの神として信仰されるようになったという。

ここでめずらしく感じたのは、拝礼の仕方である。神社の拝礼は「二礼、二拍子、一礼」が一般的であるが、出雲大社では特有の「二礼、四拍子、一礼」でお参りする。昔、高貴な人の前に出るときは手を打って敬意を表したため、古くからの祭式が残る神社では拍手の数が多いという。

平成の大遷宮でにぎわう出雲大社を後にして、夕日の美しい宍道湖を横に見て車を走らせ、美肌の湯として評判の玉造温泉に宿泊した。宿では、ちょうど解禁されたばかりの松葉ガニに舌鼓を打った。

翌朝、縁結びスポットで有名な八重垣神社を訪れた。ここは、ヤマタノオロチ退治で名高い素盞嗚尊(すさのおのみこと)と稲田姫命(いなたひめのみこと)がこの地で夫婦生活を始めたという故事にちなみ、二神を祀る縁結びの神社として知られている。稲田姫命が水を飲み、姿を映したといわれる鏡の池に、占い用紙を浮かべて縁占いをした。占い用紙の中心に硬貨をのせ、そっと池に浮かべると、紙にお告げが浮かび上がり、その紙が約15分以内に沈めば早く、また、岸から近くに沈めば身近な人と縁があるという。

この八重垣神社を後にして、今度は2015年7月に国宝に指定された松江城を見学した。松江城は、国内に現存する12天守のひとつで、天守に千鳥が羽を広げたような形の破風(はふ)が用いられており、別名「千鳥城」とも呼ばれている。4重で5階と地下1階の造りで、最上階からは、松江市街や宍道湖を一望することができた。

松江城をたち、中海にかかる、テレビCMで人気を集めた「ベタ踏み坂」として有名な江島大橋を渡り、鳥取県境港市に入った。ここは、漫画『ゲゲゲの鬼太郎』の作者として知られる水木しげる先生の出身地だ。水木先生にちなんだ通り「水木しげるロード」を散策し、水木先生が紡ぎ出す妖怪ワールドにたっぷり浸れる「水木しげる記念館」を見学した。実は、私が訪れた翌日、水木先生の訃報を聞き、非常に驚いた。境港市から移動し、米子鬼太郎空港より帰路についた。

2日間という短い時間であったが、歴史と神話に満ちあふれた山陰の旅は、日常の生活から時計を止めて自分を見つめ直すよい機会となり、ゆったりとした気持ちになれた思い出深いものとなった。


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