編集委員 増田 雅人
東京に住んでいる方には馴染みがないと思いますが、私は20年前から横浜市の南西部に位置する戸塚区に住んでいます。最寄り駅は JR東戸塚駅で、引っ越した当時の東口駅前には、銀行と紳士服の会社があり、段々畑のように整備された区画が広がり、遠くに高層タワーマンションが1棟あるだけの寂しいものでした。一方、私の住んでいる西口駅前には、駐輪場と小さなロータリーがあり、本屋とベーカリー、消防署の出張所があるだけで、通勤途上に畑が点在するというのどかな風景でした。
仙台勤務から戻った2003年の春、6年ぶりに見た駅前の風景は一変していました。東口駅前には、西武とダイエーがあり、テナントビルが立ち並び、空き地はなくなっていました。西口駅前には、スーパーなどが入居している大型ビルがあり、駅前から消防署は見えなくなりました。現在の西口駅前には、高層タワーマンションが建ち、大型駐輪場と立派なロータリーができ、ローカルながらも小綺麗な街に変貌しています。
2003年の夏の夜、仕事帰りに玄関の壁にゴキブリ(?)を発見。よく見ると、コクワガタの雌でした。数日後に近所のおじさんから、「近くにノコギリクワガタがいる里山があるんだけど、これから行かない?」と誘われ、幼稚園に通う息子と一緒に案内されました。「秘密の場所だから誰にも言わないでね」と念押しされ、毎週のように里山に行った記憶があります。
その後、息子は成長とともに昆虫に関心がなくなりましたが、私の興味はさらに盛り上がり、数年前まで懐中電灯とヘッドライト持参で、目当ての木に群がるノコギリクワガタ見たさに真っ暗な里山に入ったものでした。捕獲したノコギリクワガタは最大が雄69mmと立派なもので、自宅で2週間面倒を見ましたが、「あの里山に子孫を残さねば」と考え、大型の雌とともに自然に帰しました。不思議なもので、大人である私はちっとも成長しないどころか、子ども(少年)化しています。
今も近郊に雑木林があると、クヌギやコナラの木を識別して、車を停めて林の中に入ってしまいます。困ったものです。ちなみに、クヌギには丸型のドングリの実が、コナラには細長いドングリの実がなり、夏場には樹液を出して昆虫の食事場所になっています。
この夏もカブトムシとオニヤンマが飛んでいる姿を目撃しました。駅前は20年前と大きく変わりましたが、わが家の周辺では昆虫が昔と変わらず飛んでいて、ヤモリやリスが出没しています。クワガタの捕獲をやめた後、家庭菜園を始めました。いつかは農地を借りて野菜を作り、本格的に蕎麦打ちを始めたいと考えています。