社会保険新報 平成26年12月号

社会保険新報2014年12月号表紙

2014年12月号

都庁舎より見下ろす
新宿高層ビル群
(新宿区)

コラム東西南北 ホタル族に賠償請求 あなたは大丈夫?

編集委員 石羽澤 富雄

イラスト:東西南北

平成24年度の「国民健康・栄養調査」によると、日本人の喫煙率は20.7%で、男性は34.1%、女性は9.0%となっています。禁煙や分煙が進められていますが、頑なに喫煙を続けている愛煙家の皆さんもまだたくさんおられるようです。そこで、皆さんにお知らせです。

平成24年12月13日に名古屋地方裁判所で、他の居住者に配慮しないでベランダで喫煙していた行為が不法行為とされ、タバコを吸っていた男性が損害賠償金(慰謝料)を支払うように命じられた判決が出されていますので紹介します。

◎事件の概要
川に面した景色のよい某マンションで、階下に居住している男性が、階上に居住している高齢の女性から喫煙が元で訴えられました。訴えた女性が帯状疱疹を発症したのは、男性がベランダで日常的に喫煙し、そのタバコの煙が女性の部屋の窓や換気扇から室内に入り、その煙によりストレスが昂じて精神的な苦痛を感じたことが原因だとして、損害賠償金150万円を支払えというものでした。男性は家族が嫌がるので、タバコを吸うときはベランダで吸っていたようです。

◎判決の概要
裁判所は、原告(女性)の体調が悪化したこととタバコの煙との因果関係は認められないが、女性が(気管支ぜんそくの持病もあり)男性に対し、電話や手紙で複数回にわたってベランダでの喫煙を止めるように申し入れ、また、マンションの管理組合からも同様の申し入れを行った後も、男性がベランダでの喫煙を止めなかったことは、共用部分(ベランダ)での喫煙で、なおかつ、マンション管理規約や使用細則に共用部分で喫煙することが禁止されていないとしても、他の居住者の迷惑になるときは不法行為に該当し、他の居住者に配慮しないで喫煙を続けた行為は違法であるとして、被告の男性に対し、不法行為によって生じた女性の精神的損害に慰謝料5万円を支払うように命じました。

皆さん「健康増進法」では、法律の目的と受動喫煙の定義は、次のように定められています。

(第1条)この法律は、…(中略)…、国民の健康の増進の総合的な推進に関し基本的な事項を定めるとともに、国民の栄養の改善その他の国民の健康の増進を図るための措置を講じ、もって国民保健の向上を図ることを目的とする。

(第25条)学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、…(中略)…、受動喫煙(室内またはこれに準ずる環境において、他人のタバコの煙を吸わされることをいう。)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。

喫煙している皆さん、周りの人に煙たがられていませんか。タバコを吸うときは、受動喫煙についても配慮しましょう。

タバコは百害あって一利なしといいます。あなたとあなたの家族の健康のため、そして、タバコの煙に困っている周りの人のために、禁煙しませんか。


一般財団法人 東京社会保険協会
〒160-8407 東京都新宿区新宿7-26-9

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