社会保険新報 平成27年9月号

社会保険新報2015年12月号表紙

2015年12月号

お台場レインボー花火
(港区台場)

【コラム東西南北】一朝一夕にはできぬ人間関係

編集委員 武藤 玲

イラスト:東西南北

転職して1年、バリバリと、そして、しなやかに仕事を続ける30代半ばのA子さん。上司からの信望も厚く、働く女性のお手本としてあこがれる後輩も多い。

これだけのキャリアの持ち主、多くの友人とかなり幅広いネットワークがあって当然のはず。そんな彼女がふと、「友達をつくりたいと思う。遅ればせながら」と語った。今まで、友人であると勘違いしていた人間関係が大部分を占めていた。転職をきっかけにそれに気がつき、これからは会社という枠組みを離れた人間関係を築いていきたいのだという。

「枠組み」という言葉、同じ会社だから、同僚だから、上司だから、後輩だから、同じプロジェクトチームだからというだけで、共通する話題や無言の了解があるのは、安心感をつくるが、気楽さや甘えなどの心地よさにも通じる。これを信頼し合える関係と信じていると、本当の友情は見えてこない。「会社」というセットアップされた一つの舞台、それを別の舞台へ移したとたんに成り立たなくなる人間関係かもしれない。会社の枠組みの中だけで帰結する人間関係は、結構もろいものだ。

仕事に一生懸命になればなるほど、プライベートライフも含め、自分の100%近くが会社にチェーンでつながれていく。帰属意識も必要だが、忙しさにかまかけて人間関係でのちょっとした努力を怠ると、大切な本当の友人を見失い、自分自身も見失う。

よい人間関係は一朝一夕にはできない。意識して連絡をとる、はがきを出す、会う時間をつくる、友人のために時間を割くなど、心、体力、時間、ときにはお金を使ったり、また、傷つき傷つけられたり、感情を理性で抑えて耐えることも必要になる。"忙"は「心を亡くす」と書く。「忙しいから」のいいわけは、よい人間関係の最大の敵だ。

今、社会がほしいのは、自由な発想で自分から行動できる人材である。自分一人の経験はたかが知れている。だからこそ、枠を超えた人間関係の中で切磋琢磨することにより、"考える"ヒントを蓄積し、自分らしさを育てて行動に移す。

何事も始めるのに遅いことは決してない。機は熟し、必ずやってくる。思ったときがベストタイミング。その行動の後押しをしてくれるのは、友人たちからの影響の積み重ねのような気がする。


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