社会保険新報 平成29年2月号

社会保険新報2017年2月号表紙

2017年2月号

池上梅園(大田区池上)

【コラム東西南北】オヤジたちの休日 PART2

編集委員 小池 敏夫

イラスト:東西南北

私が関わるいくつかのグループがある。毎年定例で、それぞれのグループごとに1泊の研修旅行を企画・実施している。プランナー、コンダクター、ガイド、ドライバー、マネージャー等々。カタカナの役割は、すべて私。毎回集うメンバーは、ほぼ同じ顔ぶれ。当然のことながら、メインとなる研修はそれなりに充実させるが、参加メンバーの思惑は別にある。

それは、毎回私が企画するオプショナルツアー。数年前の話になりますが、ご多分に漏れず、「せっかくの九州だし、研修終了後は当然有志でどこか回りますよね」と持ちかけてくる。こうなると、ご期待に応えずにはいられません。さっそく、旅程のプランニング。見学予定地の選別に始まり、レンタカー・宿泊施設の予約手配等々、参加者に喜んでもらい、かつ、満足して帰途についてもらえるか考える。そして、当然のことながら、リーズナブルにまとめ上げる。ここが腕の見せどころ。

どういうわけか、私、晴れ男。オプショナルツアーは、必ずといってよいほど天候に恵まれ、絶好の行楽日和。長崎を発って、一路熊本を目指します。通過する県は、佐賀、福岡。車中は、終始談笑が途絶えることなく、気がつけば熊本県。先般の震災では大きな被害を被った熊本城も、まだこのときは健在で威容を誇っており、参加者一同感動。宿泊は、阿蘇山のカルデラにある老舗ホテル。当然のことながら、夕食は宴会状態。賑やかに夜も更けていきます。

翌日は、ハードスケジュール。阿蘇山の火口見物。草千里ヶ浜での散策。そして、日本発祥の地・神都高千穂(とパンフレットに書いてありました)。道すがら、阿蘇の伝統料理で昼食(日帰り温泉入浴付き)。炉端で味わう味噌田楽を参加者にご賞味いただき、旅行もクライマックス。熊本空港から一路東京へ。空港で搭乗を待つひととき、参加メンバーのいわく、「今回の旅行で、一気に5県も走破。やったね!!」と盛り上がる。なるほど、そういう感動の仕方もあるんだ。何気にあちこち旅して歩くことはたびたびなれど、何に感動するかは人それぞれ。世に観光名所は数々あれども、名所の所在県を数える人は如何ばかり。感動のポイントがチョット違う。

そこで、もうひとつ、旅行の話。おじさんグループ十数名による房総1泊旅行。車3台で房総半島をぐるりと巡るコース取り。ご多分に漏れず、私、分刻みの綿密なスケジュールを策定。1分の隙もなし。絶対にメンバー全員が納得する内容とほくそ笑む。さて、夕刻、御宿駅に集合した面々。まずは、宿泊施設で寛ぎのひととき。当然のことながら、その後は宴会とカラオケで大盛り上がり。参加者のあらかたが現役卒業者。出てくる話題は、「病気と介護と年金」。まともに考えれば暗くなるような話題だが、なぜか盛り上がる。人生を悟りつつある面々にとって、悲劇もまた「悲劇」という名の喜劇なのかもしれない。なんてささやいてみたりして。

「年寄りの朝は早い」なんていうのは嘘八百。夜寝るのが早いから朝の目覚めが早いだけ。起床ラッパを吹き鳴らして起こさねば、めったなことでは起き出さない。ましてや、夜更かししていれば。

そんなわけで、房総半島を巡るドライブは波乱含みのスタート。私の企画するツアーは、スケジュール通りの催行。始めよければ終わりよし。私が先導して、すべてのコースを巡る。ところがドッコイ。一筋縄ではいかないのが、筋金入りのオヤジ連。見学時間をセットしてあるにもかかわらず、「もういいや」とくる。次の見学地は徒歩で坂を下ると言うと、「上から覗いて見たから次に行こう」。挙句の果てに、「見たつもりで次に行こう」。終わってみれば、行程の半分もクリアできていない。

それでも、「とても楽しかった」ですって。皆で群れたことに感動。何もしないことに感動。だったら最初からもっとルーズなスケジュールにしたのに。それでも皆さんが喜んでくれるのであればよしとしますか。

さて、落ちの見えない話となりましたが、人に喜んでもらいたいという思いからの繰り返しが、気がつけば、いつの間にやら全国47都道府県のうち、1県を余して足を踏み入れる結果となっていた。残すは、土佐の高知のはりまや橋。そのうち必ずカンザシ買いに行ってみたい。なんてネ。

予期せぬから感動。最近つくづく感じることは、予測できる結末を期待する輩が増殖していること。つまらない時代です。自分の人生の結末が視界に入ってきているからこそ感じることなのか。人も時代も予測できないからこそ醍醐味があるのであり、良きにつけ悪しきにつけ感動が生まれるものだと思う。だからこそ、人生は期待を超える感動の旅なのかも。まさに予期せぬ感動こそ、人生を達観したオヤジたちの休日でしか味わえない醍醐味といえましょう。


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