社会保険新報 平成29年10月号

社会保険新報2017年0月号表紙

2017年10月号

旧芝離宮恩賜庭園(港区海岸)

【コラム東西南北】あなたは大丈夫?

編集委員 植西 信博

イラスト:東西南北

社会保険関係の仕事に従事して早くも25年、その間には、総人口に対する65歳以上の高齢者が占める割合が14%を超えて高齢社会となり、さらにどんどん進み、昨年9月の総務省の発表では、高齢化率は26.7%と世界保健機構や国連の定義である21%を超えて超高齢社会となっています。高齢化進行の速さもあって、昨今では、制度の歪みの是正と社会保障制度を守ることと相俟って、厚生年金保険の制度面の改定が毎年のように実施され、うっかりしていると大変なミスを犯しかねません。

たとえば、総報酬制の導入により、賞与分の厚生年金保険料を徴収することになった平成15年度の制度改定では、社会保険事務所(当時)に賞与の届出を失念した事業者が多くありました。現在でも未届けが散見されますが…。

日本年金機構から送られてくる「ねんきん定期便」により、賞与の記録が漏れていると被保険者からの申し出があり、未届けが判明するケースも発生しています。

あるケースでは、未届けのまま2年以上が経過しているために、賞与から保険料が控除されているにもかかわらず、年金事務所に保険料が納入されず、年金記録にも反映されていません。保険料の納入のためには、事業者または被保険者が、厚生年金特例法の年金記録訂正の請求をしなくてはなりません。

事業者が、賞与の支給年月日と正しい保険料率により、控除したことのわかる明細などの確認書類を提出すれば、年金事務所で判断し、厚生年金特例法による年金記録訂正と保険料の追納手続きがとられます。しかし、勤めていた企業が倒産している場合や上記を確認するための書類を紛失していたために、事業者側から賞与の保険料が控除されていたことを証明できないことがあります。この場合には、被保険者自身が、年金事務所を通じて地方年金記録訂正審議会に年金記録訂正の請求を行い、審議会の判断を待たなければなりません。

その際に、申請する被保険者が提出する給与および賞与の支払明細書と、振り込まれていた預金通帳の写しが、年金記録訂正を承認するうえで重要な判断材料になりますので、次のポイントに注意してください。

また、平成29年度の制度改定で、年金の受給資格要件が25年から10年に短縮されたことにより、年金受給の該当者には日本年金機構から案内が送られています。案内が送られてこない10年未満で年金を受給できないとあきらめていた方の場合でも、企業に勤めていた時期の記録があれば、未統合の年金記録統合となり、今回の10年に該当する場合もありますので、今一度ご自身の過去を振り返ってみる必要があると思います。

個人ができる重要なポイント

1. 給与および賞与の支払明細書は、すべて大切に保管する

2. 振り込まれたことがわかる預金通帳は、破棄せず保管する

【預金通帳に対する注意】

1か月に1回は必ず記帳する。

合算記帳をしないように銀行窓口で手続きする。

入出金が記入された取引明細の保存年数は、銀行によって異なるが、概ね10年間で破棄処分されることになるため、預金通帳に合算記帳されたものがあれば、その明細をもらって保存しておくことが大切。


一般財団法人 東京社会保険協会
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